AIに伝わる企画書の書き方——なぜ同じ指示で、違うものが出てくるのか

プロンプトと要件定義

AさんとBさん、2人のPdMが、AIに同じものを頼んだ。

Aさんは言った。「タスク管理アプリを作って。見栄えよく、使いやすい感じで」。10分後、AIはカレンダー、ガントチャート、チーム共有、通知設定——頼んでもいない機能が山盛りの「全部入り」を返してきた。だがAさんが本当に欲しかったのは、ただの「買い物リスト」だった。

Bさんは言った。「個人向けのタスク管理アプリ。対象は買い物リストを管理したい会社員。機能はタスクの追加・完了・削除の3つだけ。カレンダーは不要。完了したら取り消し線を引いて、3秒後にリストから消す」。Bさんのアプリは、一発で期待どおりだった。

2人の差は、技術力ではない。言語化の解像度だ。

AIは、聞き返してくれない

なぜAIは、Aさんに違うものを作ったのか。

人間のエンジニアなら、「タスク管理アプリ作って」と言われたら「どのくらいのスコープですか?」と聞き返す。だがAIは、聞き返さない。黙って、それっぽいものを作る。 あなたが書かなかった余白を、学習データの“平均値”——インターネット上の一般的なタスク管理アプリ——で、善意で埋めてしまう。

これは、AIが“書かれていないこと”を勝手に補完してしまう罠だ。怖いのは、それが静かに起きることだ。あなたの文脈ではなく、ネットの平均で作られたものが、それっぽく動いてしまう。

研究でも、AIが「書かれていない要件」を正しく推測できるのは4割ほど、という結果がある。逆に、AIに「分からないことを逆質問させる」対話を挟むと、出力の精度は大きく上がる。未確定を“未確定だ”と伝えるだけで、結果は変わる。

伝える3つのコツ

この“暗黙の前提”を表に出すには、3つでいい。

  1. 「やらないこと」を書く。 「カレンダー機能は不要」。AIは“足す”のが得意で、“足さない”判断は苦手だ。引き算は、人間が明示する。
  2. 曖昧な形容詞を、具体的な条件に変える。 「使いやすく」ではなく「完了したら取り消し線、3秒後に消える」。形容詞は、人によって解像度が違う。AIにとっても同じだ。
  3. AIに逆質問させる。 指示の最後に一行——「実装する前に、不明点やエッジケースを逆質問して」。これだけで、AIはそうした取りこぼしに陥る前に、あなたに確認を求めるようになる。

この3つを含めて指示を構造化する型が、RCTCO(役割・背景・タスク・制約・出力形式)だ。

企画書は、分厚くなくていい

大事なのは、ここだ。AIに伝えるのに、30ページのPRDは要らない。構造化された短い言葉=プロンプトが、最強の要件定義になる。 あなたがやるのは、頭の中にある“暗黙の前提”を、自分の手で表に出すこと。それだけで、AIは「全部入りの的外れ」ではなく、「あなたが本当に欲しかったもの」を作り始める。

もっと読む

同じテーマのナレッジや、すぐ使える無料テンプレもどうぞ。

← すべてのナレッジへ